ワイヤーカット加工における加工液の役割とは?

放電加工とは?
放電加工とは一般的な刃物で金属を加工する方式に対して、
電気エネルギーを利用して金属を加工する方法です。基本的には、
油や水などの絶縁体の加工液の中で、電極と通電性のある被加工物の間で
短時間のパルス性放電を繰り返し発生させることで生じる火花により、
加工物を溶かしながら電極の形に彫り込む加工方法です。
ワイヤーカット加工とは?
ワイヤーカットとは、正式にはワイヤー放電加工と言われる放電加工の一種で、
真鍮などのワイヤー線に電流を流して加工物を溶融させながら切断する加工方法です。
ワイヤーカットの特長としては、①導電性のある材料であれば加工可能、
②高精度加工が可能、③テーパー加工も可能、などが挙げられます。
①導電性のある材料であれば加工可能
ワイヤーカットは、加工時に局所的に発生する
6000~7000度もの高温によって加工する方法です。
一方、地球上で最も融点が高いとされている材料でも約4000度です。
そのため理論上では、導電性がある材料であればどんな金属材料でも
加工可能というのがワイヤーカットの大きな特長です。
従ってワイヤーカットでは、一般的な鋼板、ステンレス、銅、アルミなどの材料から、
超硬、インコネル、さらには多結晶ダイヤモンドまで、
様々な材料の加工に使用することができます。また、切削加工の場合においては、
薄板の切断や、超硬材料の加工は非常に困難とされています。
しかしワイヤーカットでは、薄板から200mm以上の厚みのある材料まで、
材料の硬さに関係なく加工することが出来るのです。
②高精度加工が可能
ワイヤーカットは、ワイヤー電極線と工作物が非接触のまま加工されますが、
ワイヤー線の太さがφ0.02~0.3mmということもあり、
切り代としては約0.3mm以下という加工幅になります。
つまり、切削加工では加工が難しい材料で合っても、
ミクロンレベルという高精度加工が可能というのが、
ワイヤーカットの2つ目の特長です。
工作物の寸法が小さい場合は、寸法公差±0.003mmという精密加工も可能となります。
③テーパー加工も可能
ワイヤーカットでは、直線や曲線といった平面加工だけでなく、
工作物に角度をつけて加工するテーパー加工も可能です。
板厚260mmに対して最大テーパー角度は15度となります。
そのためワイヤーカットでは、難削材の高精度複雑形状を実現することができます。
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ワイヤーカットにおける加工液の役割とは?
ワイヤーカットでは、加工物とワイヤー電極線が絶縁状態にされている中で、
加工物と電流が通ったワイヤー線が放電ギャップぐらいの距離まで接近すると、
この2つの間で絶縁破壊が起こります。つまり、空気という絶縁体が
加工物とワイヤーの間にあっても絶縁状態にはなるはずなので、
原理的には空気中でも加工可能です。
しかし、なぜ加工液の中で加工しなければならないのでしょうか?
それは、空気中で放電加工してしまうと、
放電を起こしたワイヤー線が数千度の熱を持ってしまい、
ワイヤー線が熱によって断線してしまうからです。
ワイヤーカットでは、加工槽にだけ加工液があるのではなく、
ワイヤー線の上にあるノズルからも加工液を吹きかけて、
冷却しながら加工をしています。
また、放電ギャップ内で発生した加工くずを除去するためにも加工液が必要です。
まとめ
ワイヤーカットの特長としては、①導電性のある材料であれば加工可能、
②高精度加工が可能、③テーパー加工も可能、などが挙げられます。
ワイヤーカット加工と型彫り放電加工の特長を抑えておきましょう。
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