2022.07.11
技術最前線

金型製作における放電加工のポイント

金型といっても、プレス金型、プラスチック金型など様々な金型があります。

それぞれの金型において、加工のポイントがあり、特徴もあります。

放電加工が金型加工に用いられることは知られていますが、

それぞれの金型において、放電加工をするうえでどのようなポイントが

あるのでしょうか。

今回はそのポイントについてお話したいと思います。

目次

1.プレス金型

2.プラスチック金型

3.鍛造金型

4.金型製造業に放電加工機を導入した事例

5.金型製造業のための、高精度な金型を製作するための放電加工のポイント

6.まとめ

 

1.プレス金型

プレス金型はピッチ加工を行うことが多いです。

ではピッチ加工において、放電加工はどのようなポイントがあるのでしょうか。

多くのポイントはありますが、

今回ポイントにするのは「応力」です。

 

応力とは

外力を受けた部材内部に発生する内力のことです。

応力は、部材内部に働く抵抗力であり、

この抵抗力が外力と釣り合い状態にあることで部材は壊れることがなく、

安全な状態を保っています。」

(引用:「応力とは?1分でわかる意味と種類、記号、計算法」

http://kentiku-kouzou.jp/zairiki-ouryoku.html

 

ワークから部材を切り出すことで、応力が開放されます。

その為、応力の開放を無視して加工を進めていると、

仕上げ加工において、ピッチズレが発生し、良品とならないケースが多々あります。

ワイヤ放電の加工においては、応力の開放に注意をし、

大きな部材から切り出したり、加工の順番、加工の回り方に

注意を払う必要があります。

 

応力とは別に気にしなくてはいけないのが、加工液やワークの温度です。

温度が変化するとワークは伸び縮みすることは知られています。

その為、加工前に液慣らしと言われる、加工液温にワークを慣らすということは

されている方も多いかもしれません。

 

しかし、温度が変化するのは、その時だけではありません。

加工を行う際に荒加工と仕上げ加工を行いますが、

荒加工においては大きなエネルギーで加工を行なう為、

ワークも加工液も液温が上昇しています。

仕上げ加工では荒加工に比べて小さなエネルギーで加工する為、

比較的液温は低くなります。

 

その為、荒加工終了後の液温が高い状態のまま、仕上げ加工を行なうと、

段々と液温が下がりながら加工をすることになってしまい、

結果的にワークが伸び縮みをしながら加工を行なうことになります。

その結果、ピッチズレが発生し、良品が加工できないというケースになりかねません。

対策としては、荒加工終了後に1時間程度、液慣らしを行い、

仕上げ加工を行なうと良いでしょう。

そのように加工すれば、加工中の液温の変化が最小限になり、

ピッチ加工の精度も良くなる傾向にあります。

 

2.プラスチック金型

プラスチック金型におけるワイヤ放電加工の場面では、

ワイヤ電極線が振れやすくなり、加工がうまくいかないケースが多いです。

ワイヤ電極線が振れやすくなる要因は、

プラスチック金型のワーク形状の性質上、

ノズル離れになってしまうことや加工板厚変化が多いことが挙げられます。

ノズル離れや加工板厚が多いと

加工液の影響やエネルギーの反力を受けやすく、

結果的にワイヤ電極線が振れやすくなってしまいます。

 

その為、各メーカーはノズル離れにおいて様々なアプローチをしています。

三菱電機のMPシリーズにおいては、加工中の極間情報から、三菱独自のAI技術により

ノズル離れや加工板厚などの加工状態をリアルタイムで検出し、

加工条件を自動調整してくれます。

そのことにより、段差やノズル離れでも面倒な加工条件の調整を行わなくても

安定した高精度加工が実現しています。

 

3.鍛造型

鍛造型においてはギアなどの摺動部品における金型を例に挙げます。

ギア用鍛造型においては、加工精度、面精度ともに高いレベルでも求められ、

より高度が技術が求められます。

特にギア用鍛造型においては、微小なコーナー加工における課題が

取り上げられることが多くあります。

 

ワイヤ放電加工においては、できる限り大きな線径で、できる限り小さなインコーナー

を加工することが度々求められますが、

ワイヤ線径以下の微小なコーナーを

加工条件の調整なしで加工することは困難です。

 

例えば、ワイヤ線径に対してコーナー径が十分なコーナー(大コーナー)と、

小さなコーナー(小コーナー)を比較した時のことを例に挙げます。

放電の発生確率はワイヤ電極線がワークから遠ければ遠いほど少なくなります。

また、ある加工条件下では放電の発生確率(発生数)は同じです。

 

2つのコーナー加工を比較した時に

大コーナーはコーナー加工の出口付近でワイヤ電極線の後ろ側に

ワークが比較的ないのでワイヤ電極線とワークの距離は遠く、

ワイヤ電極線の前側に放電を発生させ加工することができます。

小コーナーはコーナー加工の出口付近でワイヤ電極線の後ろ側に

ワークが比較的あるのでワイヤ電極線とワークの距離は近く、

ワイヤ電極線の前側の放電発生が少なくなり、その状態で加工することになります。

また小コーナーにおいては、1st加工や2nd加工ではインエッジ

(オフセット後のコーナーがエッジ)になる場合があり、

上記のような影響を受けやすいです。

 

その結果、形状精度の悪化の一因となります。

この問題を解決する為に、三菱電機ではコーナー径によらず、

高精度な形状の加工が可能なコーナー制御があります。

本制御では、コーナー部加工中の放電発生確率をモデル化し、電気エネルギーや

加工速度をコーナーの形状に合わせて最適化することが可能です。

具体的な制御方法は企業秘密とのことで記載できませんが、

 

三菱電機のワイヤ放電加工機は

難易度の高いコーナー加工をより簡単に加工できるような制御が備わっています。

これは余談ですが、鍛造型の寿命向上においては、放電加工層の除去が重要との

文献も見受けられました。

チェックされてみるのはいかがでしょうか。

(参考:型技術2022Vol.37No.8 AI技術「Maisart」による高精度形状加工)

 

4.金型製造業に放電加工機を導入した事例

放電加工機お役立ちナビでは、2020年9月に富山県南砺市にある株式会社江川製作所様に

三菱のワイヤ放電加工機MV1200Sを導入させていただきました。

株式会社江川製作所様は1969年に設立され、

プレス金型製作及びプレス加工や切削加工による部品加工

をされています。

ワイヤ放電加工機購入に至った経緯などをお伺いしました。

>>詳しくはこちら

 

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6.まとめ

今回は、金型製作における放電加工のポイントについてご紹介をさせていただきました。

放電加工の奥深さはまだまだ深いことを痛感しております。

 

放電加工機お役立ちナビを運営する菱光商事株式会社では、

金型製作における放電加工機の技術相談を承っております。

 

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