放電加工機とは何か?特徴から種類、価格まで解説!
1. 放電加工機とは
放電加工機とは、水や油などの液体の中で、向かい合った金属の間に電気による火花を起こすことにより生じた熱で金属を溶かして加工する工作機械です。液体の中で火花を起こすと、金属が溶けはじめ、液体によって冷やされ飛散します。飛散しなかった箇所は穴のようにくぼんだ状態で残ります。このように、火花を起こし、金属を溶解→冷却→飛散の流れを繰り返すことによって金属を加工する方法が放電加工です。
2. 放電加工の特徴
放電加工には、
- 難削材の加工が可能
- 高精度で微細な加工が可能
- 非接触加工なので工作物へのが外力がかからない
...等々、多くのメリットがあります。
1つ目のメリットは「難削材の加工が可能」であることです。放電エネルギーによって加工していくので、電気を通す材質であれば、どれほど硬くても加工が可能です。放電加工の最大のメリットといっても過言ではないでしょう。
2つ目のメリットは「高精度で微細な加工が可能」であることです。液体の中で放電起こす火花を小さくし、放電エネルギーを小さくすることで、微細加工が可能になります。工作物や形状によって異なりますが、マイクロメートル単位での高精度加工ができます。
3つ目のメリットは「非接触加工なので工作物へのが外力がかからない」ことです。放電加工では外力がかからないため、工作物に対する負荷が限りなく少なくなります。例えばプレス機械などの機械式のせん断だとどうしてもダレやバリがが発生してしまい、後で、面取りをしなければなりません。その点、放電加工では切断面のダレやバリの発生が少なくなり、面取りの後工程を短縮することができます。また、液体の中で加工するため熱変異もほとんどありません。その為、薄板加工などでひずみを嫌う加工にも使用されます。
さて、ここまで放電加工のメリットを見てきましたが、もちろんデメリットもあります。例えば、導電性のない工作物へは加工できません。また、放電加工は1回の放電で削ることができる部分が少ないので、切削加工と比較すると加工速度が遅いです。
3. 放電加工機の種類
ひとえに放電加工機といっても大きく3種類に分けられます。形彫り放電加工機、ワイヤ放電加工機、細穴放電加工機です。
3-1 型彫り放電加工機
まず、形彫り放電加工機とは、電極と工作物の間に電気を用いて火花を飛ばし、工作物を溶かして必要な形状に加工していく機械です。
電極と工作物とは常に一定間隔を保った状態で加工します。電極形状は様々な為、加工が終わるとその形状が工作物へ転写されたように加工されます。電極の取り付け部分である主軸、材料の設置部分であるX-Yテーブル、加工液をためる加工槽、電源装置、各軸を制御するNC装置から構成されています。
各軸ともサーボモーターによる制御を行い、マイクロメートル単位で移動や位置を決めることが可能です。
3-2 ワイヤ放電加工機
ワイヤ放電加工機とは、ワイヤ電極線と工作物との間に電気を用いて火花放電を行わせ、工作物を溶かしながら一筆書きで必要な形状に加工していく機械です。
糸鋸のように木の板に色々な形状を加工するのと同じイメージです。ボビンに巻かれているワイヤ電極、ワイヤ電極を送り出す駆動装置、工作物の設置部分であるX-Yテーブル、加工液をためる加工槽、加工液中のイオンを取り除く脱イオン装置、電源装置、NC装置から構成されています。
3-3 細穴放電加工機
細穴放電加工機とは小径の穴を加工するための放電加工機です。主にパイプ電極を使用し、加工材料間に発生する放電の作用によって加工をします。
4.放電加工機の価格
放電加工機の価格は種類とメーカー、あるいはストロークサイズなどによって異なりますが、概ね以下の相場になります。
4-1 型彫り放電加工機
1,000万円弱~3,500万円程度
4-2 ワイヤ放電加工機
1,000万円弱~3,000万円程度
4-3 細穴放電加工機
300万円弱~2,000万円程度になります。
5.新旧シリーズ比較|?FAシリーズからMVシリーズを比較!
1.ワイヤ放電加工機FAシリーズとMVシリーズとは?
FAシリーズ、MVシリーズは、いずれも三菱電機株式会社が製造販売しているワイヤ放電加工機です。
◆FAシリーズ:2000年~2012年
FAシリーズ内にも汎用機種(FA)、高精度機種(FA-P)があります。
◆MVシリーズ:2012年~現在
MVシリーズ内にも汎用機種(MV-S)、高精度機種(MV-R)があります。
各シリーズの製造販売時期は上記の通りで、FAシリーズの後継機種がMVシリーズとなります。
2.FAシリーズからMVシリーズで何が変わったのか?
機種名以外に何が変わったのでしょうか?性能や特徴を比較していきます。
①自動結線 性能向上
ワイヤ放電加工機の重要な機能である「自動結線」。これが成功しなければ加工を開始することができません。特に土日の生産スケジュールにも影響を及ぼすため、自動結線の成功率は生産効率を左右する重要な要素といえます。
-FAシリーズとMVシリーズの自動結線に関する比較-
項目 |
FAシリーズ |
MVシリーズ |
結線可能な高さ |
260mm |
500mm(MV4800にて) |
浸漬状態での結線可否 |
高さ限定されるが可能 |
可能 |
ジェットレス挿入 |
不可 |
可能 |
ワイヤ電極線真直処理機構 |
あり(ただし距離短い) |
あり |
断線点挿入の可否 |
不可 |
可能 |
下穴最小径 |
φ0.5まで |
φ0.3まで |
サイクルタイム |
104秒 |
18秒 |
このようにFAシリーズでは不可能であったことがMVシリーズでは可能になるなど、全体的な性能向上が図られています。
②加工性能 向上
新電源の追加や駆動軸の変更など、多くの変更追加点があります。
-FAシリーズとMVシリーズの加工性能に関する比較-(一部)
項目 |
FAシリーズ |
MVシリーズ |
駆動軸 |
ボールネジ |
シャフトリニア |
ピッチ加工精度 |
-2.2~3.4μm(FA-S) |
-2.0~2.6μm(MV-S) |
加工時間(3thCUT、Rz3.5μ狙い) |
100% |
91%(MV-S) 83%(MV-R) |
消費電力 |
100% |
45%(MV-S) 31%(MV-R) |
IoT機能 |
無し |
Remote 4U |
加工精度はもちろん、複数回加工時の面粗さが向上、操作性の向上、電力消費量削減(省エネ)など様々な点で性能向上しています。
6.ワイヤ放電加工機導入事例|株式会社タカタ工業様
1.導入機種
三菱ワイヤ放電加工機 MV2400R
各軸移動量:X600×Y400×Z310(mm)
主なオプション:アングルマスターADVANCEⅡ(テーパー加工最大45°)
2.ワイヤ放電加工機を増設しようと思ったきっかけは何ですか?
既に所有していたワイヤ放電加工機は導入から10年が経ちます。
メーカーからは「10年経過すると精度が衰えてくるので機械更新されてはどうか」
とすすめられていました。
既存のワイヤ放電加工機は弊社に高度な加工精度をもたらし、
良く稼働してくれたと思っています。
しかし、ワイヤ放電加工機を使った加工は高精度かつ高度な加工を要求されることが多く、
使用頻度も多いので、最新の機械を増設することを検討し始めました。
3.なぜ三菱電機のワイヤ放電加工機なのですか?
ご縁があり放電加工機お役立ちナビさんから
三菱電機のワイヤ放電加工機をご提案いただいた際に
三菱電機の「サポート10」という保守契約をご紹介いただきました。
2年間無償で付帯(MV-R、MP、MXシリーズのみ)されており、
3年目以降は有償ですが、年間の保守契約料金が格安なのにも関わらず、
年に2回定期メンテナンスに来てくれるのに加えて、
純正消耗品の購入でポイントが貯まる制度も付帯されており、
充実した内容でした。
ワイヤ放電加工機を10年間使用してみて稼働期の定期メンテナンスの重要性を感じていた
弊社にとってはうってつけの保守契約でした。
また、定期的に三菱電機の加工技術者が既存ユーザーを巡回し、
加工技術支援をしているということも聞き、
今よりも高精度かつ高度な加工技術を身につけなければいけない弊社に
マッチしたメーカーさんだと感じたので、三菱電機のワイヤ放電加工機に決めました。
7.ワイヤ放電加工機による微細加工
ワイヤ放電放電加工機で微細加工を行う上でのポイント
次にワイヤ放電加工機の微細加工を行う上でのポイントをご紹介いたします。
① ワイヤ電極の線径の選定
ワイヤ電極は、加工物の厚みや形状精度(最小コーナR)、および加工の目的に応じて適切な線径を選ぶ必要があります。微細な形状を加工する場合には、細径のワイヤ電極が適しています。細いワイヤ電極を使用すると、ピン角が丸くなりにくく、小さなコーナRや狭いスリット幅の加工に最適です。
一方で、板厚が厚い場合には加工速度が遅くなる可能性があることや、細径のワイヤに対応したワイヤ放電加工機を選定する必要があるといったデメリットも存在します。
② 加工液(水と油)使い分け
ワイヤ放電加工では、一般的に加工速度が速い水加工液が広く使用されていますが、微細加工には油加工液の方が適している場合があります。油加工液は絶縁性が高いため、放電ギャップが小さくなり、形状や寸法の精度が安定しやすいという特徴があります。また、水加工液に比べて、細かい面相さを得ることができます。
しかし、油加工液は、水加工液に比べて加工速度が遅くなることや、対応するワイヤ放電加工機が水加工液対応の機種よりも高価である当の問題点が挙げられます。そのため、機種を選ぶ際には、予算や求める加工精度、加工に必要な時間とのバランスを十分に検討する必要があります。
微細加工ができるお奨めのワイヤ放電加工機をご紹介
それでは微細加工に適したワイヤ放電加工機をご紹介いたします。
三菱電機製 MXシリーズ
三菱電機の油加工液を使用したワイヤ放電加工機「MXシリーズ」
水に比べて放電ギャップが小さいため、リードフレームや電子コネクタ関係、極小R加工されるユーザー様におすすめです。φ0.05㎜ワイヤ電極の高い結線を実現可能としています。
加工例:高精度ギア加工
機種:三菱ワイヤ放電加工機MX600
電極材:φ0.05/SED(Zn)
工作物:超硬合金(KD20)
板厚:3㎜
精度:形状±1μm
面粗さ:Rz:0.3㎛/Ra0.04㎛
三菱電機製 MPシリーズ+OP:φ0.05、0.07ワイヤ線自動結線仕様、超仕上電源(Super-DFS電源)
三菱電機の水加工液を使用する加工機の中でフラグシップモデルとなる「MPシリーズ」
機械全体の温度を同調管理し、熱変異補正も自動で行い、水ワイヤ加工機でありながら従来の油ワイヤ加工機並の精度を誇ります。また、MPシリーズはオプションを付属することにより微細加工が可能となります。φ0.05、0.07のワイヤ線の自動供給仕様についてもオプションにより対応可能となります。
さらに超仕上電源(Super-DFS電源)のオプションをつけることにより高速微細加工面仕上がりが可能となります。
加工例:微細スリット加工
機種:三菱電機ワイヤ放電加工機MP1200
電極材:0,05スミスパークγM
工作物:steel
板厚:0.5~1.0mm
形状:±1μm
面粗さRz0.80μm/Ra0.10μm
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