2024.03.11
技術最前線

ワイヤ放電加工機の加工ノウハウ 高精度ピッチ加工・上部/下部の寸法差 編

今回はワイヤ放電加工機の加工ノウハウをご紹介します。

1.高精度ピッチ加工

高精度ピッチ加工を行うための基礎知識

高精度に加工をするためには様々な環境や段取りなどを整えることが必要です。

特に、

・室温の変化

・加工機周辺の振動

・段取り時の確認作業

・加工中及び加工後の処理

についてはより考慮し、加工を行うべきと考えられています。

事前準備及び確認作業

ワーク(工作物)

ワークを加工機のある部屋に持ち込んでから半日以上は温度ならしをする必要があります。

これは温度変化により、ワーク自身が伸び縮みすることがわかっており、

それによる寸法公差を極力なくすことが目的です。

ワイヤ電極線

ワイヤ電極線は封を切った状態で放置されていると表面が酸化して安定した放電が発生しない

原因ともなり得ます。その為、なるべく新しく、できれば封を切った直後のワイヤ電極線を

使用することで、より高精度なピッチ加工が可能となります。

また、ワイヤ電極線においても、ワーク同様に温度ならしをすることが望ましいです。

環境

高精度加工においては前述通り、急激な温度変化はNGです。

1時間以内に1度以上の変化は急激な温度変化と捉えて、空調の運転時間などの調整を行うと良いです。

また、空調の風が直接加工機あたることで温度変化を生む場合があり、

空調の風向きや、そもそも加工機設置場所を考慮するなどの環境整備も重要です。

空調以外にも直射日光が加工機にあたっていたり、部屋の扉や窓などの開け閉めによる

温度変化に関しても気を配る必要があります。

段取り

工作物の固定

加工機の送り速度が一番よい場所、X及びY軸の中央付近に固定するようにします。

その為にはブリッジホルダなどの治具を購入するか、自作するなど対応が必要です。

治具については使い勝手や精度などの面から、各種治具取り扱いメーカーで購入された方が

より良い加工ができるものと思います。

固定は1目盛り2μmのダイヤルゲージを使用して、

各軸の平行度が2μm以下になるように固定する必要があります。

試し(テスト)加工

実際の製品の加工を行う前に試し(テスト)加工を行うことにより、

これまでに行ってきた工程(温度ならし、段取りなど)を確認することができます。

加工中及び加工後

加工中

加工中に異常が発生した場合、すぐに発見できるようにしておく必要があります。

前述の通り、急激な温度変化はNGなので温度について定期的に確認することが望ましいです。

温度は加工液、室温をチェックできるように市販されている温度計などを用いて、

確認することが望ましいです。

荒加工が終わったあとは加工がひずんでいる場合があります。

その為、荒加工後は端面位置決めした位置を確認するなどして、

大きな誤差(5μm以上)がないか確認した方が良いです。

加工後

加工終了後は素早くワークを取り外し、脱脂及び錆止めの処理を行います。

加工が正常に終了しているか確認するために加工前に接触した位置を測定するなどして、

確認作業を繰り返し行う方が良いです。

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三菱ワイヤ放電加工機でより高精度なピッチ加工を行うためには

ワイヤ放電加工機MPシリーズがおすすめです。

詳細は下記の動画をご覧ください。

 

2.上部と下部の寸法差を少なくする加工

ワイヤ放電加工機ではワイヤ電極線の消耗の影響で上部と下部で寸法差が出る場合があります。

なるべく寸法差がないように加工するためには加工ノウハウが必要です。

寸法差が出る理由

ワイヤ電極線

ワイヤ放電加工はワイヤ電極線とワークとの間に放電が発生し、

放電熱により互いに溶ける(消耗)ことで、加工を行います。

ワイヤ電極線は上部から下部に向けて走行しているため、上部で消耗したワイヤ電極線が

下部にいき再度加工するという構造です。

その為、下部に進むにつれて、ワイヤ電極線は小さくなることになり、

結果的に上部と下部の寸法差が生まれます。

加工エネルギー

ワイヤの消耗量は加工エネルギーが大きければ大きいほど大きくなります。

その為、荒加工においてはより上部と下部の寸法差が生まれ、仕上げ加工においてもその影響が

残存して結果的に上部と下部の寸法差が生まれます。

対策

ワイヤ電極線の消耗を少なくする

前述の通り、ワイヤ電極線の消耗が発生し、それが上部から下部に向かって走ることで

上部と下部の寸法差が生まれます。

その為ワイヤ電極線の消耗を少なくすることで対策が可能です。

ワイヤ電極線の消耗を少なくするには、ワイヤ電極線の走行速度を速くする方法があります。

ワイヤ電極線の走行速度が速くなれば、ワークとの間を通る時間が短くなり、

ワイヤ電極線の同じ部分で放電を繰り返す回数を抑制できます。

その結果、ワイヤ電極線の消耗量が少なくなり、上部と下部の寸法差が生まれる対策となります。

3.最後に

いかがでしたでしょうか。

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