2022.09.12
技術最前線

金型製作における加工精度向上を実現する三菱ワイヤ放電加工機(ワイヤーカット)の機能「Maisart」

先々月には「金型製作における放電加工のポイント」

先月には「金型製作における放電加工の役割」

をご紹介しました。

まだご覧になっていない方はぜひご覧ください。

そして今回は「金型製作の課題における三菱電機放電加工機の機能(ワイヤ放電加工機)」

と題して、金型製作に対してワイヤ放電加工機がどのような機能を持ち合わせているのか

ご紹介します。

 

1.はじめに

先々月にご紹介した「金型製作における放電加工のポイント」でもご紹介しましたが、

金型製作の中でワイヤ放電加工機を使用する場合、

ワークとノズルが離れた状態で加工をするノズル離れ加工や

下記のワークのように、加工板厚変化があるワークを加工する場合があります。

今回はそのノズル離れ加工と加工板厚変化の加工に焦点をあててご紹介します。

機種:MP1200

工作物:Steel(SKD11)

板厚:10~30mm

面粗さ:Rz 1.6μm/Ra 0.20μm

精度:形状±2μm

加工ポイント:ノウハウレスでの高精度加工

       板厚変化における高精度加工

引用元:https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/mecha/edm/pmerit/example/wire/w0253.html

 

2.ワイヤ放電加工機(ワイヤーカット)のノズル離れ加工と加工板厚変化の加工

ワイヤ放電加工機の加工では、ワークの板厚変化や座ぐりの加工、治具との衝突回避

のため加工液ノズルがワーク上面もしくは下面から離れた状態で加工をせざるを得ない

時があります。

このことをノズル離れ加工と呼ぶことがあります。

ワークとノズルの位置関係は加工精度と関係が深いです。

その為、一般的にはノズル離れ加工になる場合は、

試し加工を行ったうえで加工条件を調整したり、

熟練者による経験で加工条件を決めることが多いです。

また加工条件はワーク板厚ごとに用意されています。

その為板厚が変化するような加工において、高精度加工をすることは

非常に難易度が高いと言えます。

 

3.ノズル離れ・板厚変化加工でのワイヤ放電加工機(ワイヤーカット)の課題

●ノズル離れ量の変化による加工精度の悪化

ワイヤ放電加工機の加工中、ワイヤ電極線はどんな加工においても微小に挙動をしています。

ノズル離れ量が大きくなると、ワイヤ電極線の挙動が大きくなります。

その為、ノズル離れが変化すると挙動の大きさも変化します。

挙動の大きさが変化している中、同じ加工条件で加工をすると、加工量に影響を及ぼし、

結果的に寸法差ができてしまいます。

これがノズル離れ量の変化による加工精度の悪化です。

●板厚変化による加工精度の悪化

板厚変化があるワークを加工する場合、

その板厚ごとに加工速度が最適化されずに加工をすることとなります。

その場合、速度変化が過大な場合と速度変化が不十分な場合とで

下記の図1のように寸法差が生まれてしまいます。

これが板厚変化における加工精度の悪化です。

 

4.Maisart制御による課題解決

上記3で述べた課題の解決の為、三菱電機ではMaisartがあります。

Maisartは三菱電機独自のAI技術です。(図2参照)

加工中の極間電圧や放電周波数の変化などから加工板厚やノズル離れ量を

推定し、電気エネルギーや加工速度を状態に合わせて最適に調整します。

加工時のZ高さごとに加工条件が分かれており、指定範囲内のZ高さであれば、

板厚やノズル離れ量によらず、高精度な加工が安定して可能になります。

Maisartを使用する為には、加工条件検索の際に「MaisartDB」を選択する必要があります。

「MaisartDB」から検索を行うことで、板厚やノズル離れ量によらず、

同一の加工条件で加工をすることができます。

5.加工事例

●プレス金型向け加工サンプル

コネクター用プレス金型を想定した加工サンプルをご紹介します。

板厚とノズル離れ量の異なる角穴と丸穴を4ヶ所加工しています。

板厚10~30mmで、ノズル離れ量10~30mmの段取りにおいて

Maisart制御により加工条件を切り替えることなく

加工精度±2μm、Ra0.2μmの高精度加工を実現しました。

●樹脂金型向け加工サンプル

コネクター用樹脂金型を想定した加工サンプルをご紹介します。

板厚20~30mm、ノズル離れ量40~60mmの段取りにおいて、

Maisart制御により加工条件を切り替えることなく、

加工精度±1.5μm、Ra0.4μmの高精度加工を実現しました。

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7.まとめ

いかがでしたでしょうか。

ワイヤ放電加工機においてはノズル離れの加工、板厚変化のある加工は

切っても切りはなせない課題の一つであるため、

各メーカー様々な機能でこの課題と向き合っています。

どのような機能にしても、ノウハウレスをキーワードとして

向き合っているのが印象的です。

人手不足と囁かれる中、こういったノウハウレスの機能が

益々増えていくことになると思います。

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参考文献

型技術 2022年4月臨時増刊号 ここまでできる!放電加工活用ガイド

「AI技術Maisartによる高精度ノズル離れ加工」 著者:三菱電機株式会社 近久 晃一郎