【2025年版】三菱電機の放電加工機 全ラインナップ徹底解説！AI技術と高精度の秘密とは
精密金型や難削材の加工に欠かせない「放電加工機」。
国内トップクラスのシェアを誇る三菱電機の放電加工機は、単なる機械性能の高さだけでなく「Maisart（マイサート）」と呼ばれる独自のAI技術を搭載している点が最大の特徴です。
本記事では、三菱電機の最新ラインナップ（ワイヤ放電・形彫放電）の特徴を整理し、現場の課題に合わせた最適な一台を選ぶためのガイドとして解説します。
1. ワイヤ放電加工機のラインナップ
ワイヤ放電加工機は、求められる「精度」と「用途」「大きさ」に応じて4つのシリーズが展開されています。
MXシリーズ（超高精度 油加工液仕様）
三菱電機の高精度ワイヤ放電加工機「MXシリーズ」は、スマートフォンやEV部品などの超精密加工において、常識を覆す以下の5つの「逆説」的な技術思想を採用しています。
■高剛性構造
高推力シャフトリニアモータと超高剛性リニアガイドとの相乗効果により、ウェービングを極限まで低減しています。
さらに、高剛性ベッド研削やキサゲ作業などの予測組み立てにより機械を作りこみ、安定した高精度加工を実現しています。
鋳物には一般ねずみ鋳鉄FC300と比較して、ヤング率（縦弾性係数）1.3倍の物を使用しています。
■熱分離構造
熱源となる電源、ユニットクーラ、加工液タンク、Z軸モータなどを機械本体から離すことで熱影響が受けにくいアイソレート構造となっています。
加工槽内においても加工液温度分布均一化の為の高精度液温管理をしています。三菱電機の高精度機種・大型機種でも採用されている機械構造体温度と加工液温度を同調管理するサーマルバスターシステムも搭載されいています。
■ワイヤ振動低減技術
ワイヤ電極線の駆動モータをフルACサーボモータ化し、回収ローラギアの回転ムラが15％から4％へ低減するなどワイヤ電極線の振動幅を抑制しています。
振幅が被加工物に転写されるため、いわゆるタイコ形状になりやすくなっていたのが均等に放電が発生することで面粗さの均一性が向上し、板厚方向の真直精度の向上も期待できます。
■ラインナップ
MX600
MX900
MX2400
MPシリーズ（超高精度 水加工液仕様）
三菱電機の最新ワイヤ放電加工機「MPシリーズ」に搭載されたテクノロジーは、これまで熟練技術者にしかできなかった高度な作業を自動化し、業界の常識を根本から変えつつあります。
■AI技術「Maisart」による加工精度の自動最適化
段差やザグリがある難しいワークでも、独自AI「Maisart」がリアルタイムで加工状態を解析し、条件を全自動で最適化します。これにより、熟練者の調整なしで形状精度が劇的に向上（例：板厚30mmで±5.0μmから±2.0μmへ）し、誰でも安定した高精度加工が可能になります。
■ 摩耗・発熱ゼロの「シャフトリニアモータ」
駆動方式に非接触の「シャフトリニアモータ」を採用しました。従来のボールネジ方式のような摩耗やバックラッシュ（遊び）が原理的に発生せず、発熱も抑制されます。長期間使用しても精度が劣化せず、高精度な軸移動と省エネを両立します。
■水加工で鏡面仕上げを実現する「S-DFS電源」
「超仕上電源（S-DFS）」の搭載により、管理が容易な「水」を加工液としながら、油加工機に匹敵するサブミクロンレベルの鏡面仕上げ（超硬合金 Rz:0.4μm）を実現しました。これにより、火災リスクや管理の手間がかかる油加工機が不要になる可能性があります。
■ラインアップ
MP1200
MP2400
MP4800
MGシリーズ（高性能）
三菱電機は、「未来の技術を、誰にでも」をコンセプトに、新型ワイヤ放電加工機「MGシリーズ」をリリースしました。本シリーズは、これまで熟練の技術者に頼らざるを得なかった高精度・高品位な加工を、最新技術により誰でも簡単に実現可能にしたハイクラスモデルです。生産現場が抱える「人材不足」「生産性向上」「省エネ」という3つの重要課題に対し、革新的なソリューションを提供します。
環境性能も大きく進化しており、ポンプやユニットクーラの制御最適化により、従来の主力機（MVシリーズ）と比較して消費電力を最大30％削減しました。
MG12
MG24R
MG24
MVシリーズ（大型加工機）
■自動結線能力
新たなワイヤ電極アニール機構や新ジェット水流機構により従来機よりも自動結線能力が格段に向上しました。
ワイヤ電極アニール機構では、アニール電源性の向上、テンション制御性能向上により、ワイヤ電極線のカール率が10％であっても巻き癖を取り除き、自動結線を行うことができます。
■加工制御
PM制御（フルオート荒加工制御）
加工状態を自動認識し、「段差」「座ぐり・裏逃げ」「中空」
のような板厚が複雑な加工においても加工条件の設定・ノウハウが不要で
加工が可能です。
CM制御（コーナー制御）
鋭角・鈍角問わず対応可能です。
荒加工・仕上げ加工の場合の制御をパラメータで設定変更可能です。
CM制御の強弱もパラメータで設定変更可能です。
EM制御
アプローチ部分の凹みを低減できます。
凹凸の調整がパラメータで設定変更可能です。
SL制御
デジタル電圧検出にて加工エネルギーの変化をより正確に検出することが可能です。
それにより板厚ごとのに加工量を最適に制御し、
段差部分での加工量が安定します。
NL制御
新加工サーボにより従来の2倍の制御周期で加工速度をフィードバック
できるようになりました。
そのことにより、より詳細な寸法推定が可能となり、寸法差を抑制することが
可能になりました。
■ラインアップ
MV4800S
MV4800R
2. 形彫放電加工機のラインナップ
形彫放電加工機は、求められる「精度」と「大きさ」に応じて2つのシリーズが展開されています。
SV-Pシリーズ（超高精度形彫放電加工機）
■機械剛性アップ
ラム鋳物構造変更により機械剛性が向上し、中大面積加工性能が向上しました。
（面均一性向上、過去時間短縮、電極ばり抑制）
（左図：従来機種 構造解析結果、右図：SV12P構造解析結果）
■サーマルバスター
三菱の独自技術「サーマルバスター」を標準装備しており、機械設置環境の温度変化をセンサリングし、機械構造体の熱変位を予測することにより各軸の移動量を制御します。また、長時間加工時の昼夜の環境温度変化と加工液温度を「見える化モニター」で可視化を行います。
サーマルバスター説明図
±3℃環境での各軸変化量
■ラインアップ
SV8P
SV12P
SGシリーズ（高性能形彫放電加工機）
■三菱電機AI技術「Maisart」
Maisartとは三菱電機のAI基盤技術及び応用技術などを踏襲したAI技術ブランドの総称です。
SGシリーズにはこのAI技術である「Maisart」が標準搭載されています。
Maisartが搭載されていることにより、加工時の進行状況を自動判断するなど、加工状態をリアルタイムに把握することで生産性を30％向上（従来機との比較）を実現しています。
AIによる加工状態を制御装置が判断し、加工が安定するようにジャンプアップ量を最適化します。
図のように加工の深さに応じて、加工が安定するように自動でジャンプアップ量の調整を行います。
また、加工速度の向上、電極消耗の低減等、優先順位の設定に応じて自動制御を最適化することも可能です。
■加工例：グラファイト大面積
本加工の特長
・高応答性サーボにより安定加工を可能とし側面、底面の面均一性を向上
・熱変位補正+Z軸冷却機構により機械熱変位を抑制し、長時間加工においても安定した精度を維持
・AIを活用したジャンプ機能により大形形状特有の電極のガス抜き穴が不要
■ラインアップ
SG28
SG70
