細径ワイヤ電極線 スミスパークγ
今回ご紹介するのは住友電気工業株式会社のスミスパークγという商品です。
ワイヤ放電加工機における細線加工で使用されるワイヤ線です。
1.スミスパークγとは
ワイヤ電極線はワイヤ放電加工機に用いられ、
要求される加工時間、精度、面粗さなどにによって様々な種類があります。
住友電気工業株式会社様は長年の経験から、汎用加工用、高速加工用、高精度加工用と
幅広いニーズに対応されており、
今回ご紹介するスミスパークγもそういった幅広いニーズをより広くするために
開発されたワイヤ電極線です。
スミスパークγは高強度の鋼線の表面に黄銅をメッキした高精度用途に分類されるワイヤ電極線で、
黄銅に含有する亜鉛比率を高めることで高速加工性をも実現しています。
線径はφ0.03~0.1で、長さは5,000m、10,000m、20,000mというラインナップです。
2.黄銅の亜鉛比率と加工速度の相関
亜鉛はワイヤ電極線において加工速度が向上する効果があり、ワイヤ電極線の表面に
亜鉛メッキした黄銅線や亜鉛の含有量を増やしたワイヤ電極線は既に普及しています。
住友電気工業株式会社様は
加工速度がもっとも速い亜鉛含有率をいくつなのかを実験をしました。(図1)
実験により亜鉛含有量が60~70%の黄銅がもっとも優れていると判明したため、
スミスパークγでもこの含有量を採用しました。
またスミスパークγの断面図は図2のとおりです。
ちなみに亜鉛含有量が60~70%の黄銅をγ相黄銅と呼ばれることから
製品の名前でも「γ」を採用しています。
3.スミスパークγと亜鉛メッキワイヤ電極線との放電特性の違い
住友電気工業株式会社様はスミスパークγの放電特性を
亜鉛メッキワイヤ電極線と比較調査をするために
放電加工中の電流、電圧はオシロスコープにて測定しました。
測定の結果、スミスパークγは亜鉛メッキワイヤ電極線に対して
導電率が低く、放電回数は多いが電流値は低い値であることがわかりました。
耐断線性は、亜鉛比率の高い黄銅(γ黄銅)が直接鋼線に接しているスミスパークγの方が
優れており、比較的低いサーボ電圧でも断線しにくく、結果的に加工速度が向上しました。
また、スミスパークγの高速加工時の加工条件は、本ワイヤ電極線において導電率が低いことを
考慮し、サーボ電圧を下げ、加工電圧をあげることがポイントになることもわかりました。
4.スミスパークγFine
スミスパークγの上位品種としてスミスパークγFineがあります。
スミスパークγFineはワイヤ電極線表面の凹凸が少なく、加工面に平滑性が求められる
際に最適なワイヤ電極線です。
図3は長さ方向のワイヤ直径のばらつきを、
スミスパークγとスミスパークγFineとで比較した図です。
この図からも凹凸が少ないことが見て取れます。
5.スミスパークγの新たな用途と今後の展開
スミスパークγは3.で示したように、放電ギャップが小さいという特徴があります。
この為最適な加工条件で加工を行う為には放電ギャップを2μm縮めることをおすすめします。
この特徴を生かして、他のワイヤ電極線よりも狭Rの加工が可能になります。
また、PCDの工具加工、化合物半導体材料スライス加工での歩留まり向上にも期待できます。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
スミスパークγが高精度かつ高速加工に適していることがお分かりいただけたかと思います。
本製品のことで知りたいことや見積が欲しい、購入したいなどあれば、
下記のお問い合わせよりご連絡ください。
参考文献
住友電工スチールワイヤー㈱ 高村伸栄、佐藤大五、棗田善貴
型技術 放電カットワイヤの最新技術と適用例について 日刊工業新聞社 2017年